所有しているアンプが古くなると、アンプの寿命が気になる方も多いのではないでしょうか。アンプは数万~数十万円で販売されている製品が多く、買い替えには出費が伴います。
アンプは寿命の長いオーディオ機器であり、通電頻度が高ければ故障もほとんど起こりません。部品の経年劣化はあるものの、製品によっては自分で修理・パーツ交換をすることも可能です。
今回は、アンプの寿命を解説します。劣化しやすい部品やメンテナンス方法も解説するため、アンプの寿命や寿命を伸ばす方法が知りたい方は参考にしてください。
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アンプの寿命はどれくらい?
アンプの寿命には、明確な年数がありません。アンプの耐久性はメーカーや機種によって異なり、不調・故障がある場合でも部品を交換すると長く使い続けることが可能です。そのため、アンプの寿命とは劣化した部品を修理しても不調や故障が解決しない場合を指します。
アンプの寿命に大きく関わる部品寿命は、部品自体の耐久性や使用環境・管理方法によって大きく異なります。大切に使用していれば10年以上使い続けられるアンプでも、乱雑に扱えば数年しか持たないケースもあるでしょう。
また、アンプを大事に保管していても寿命が縮まるケースはあります。通電せずに長時間放置すると内部の部品が劣化を起こし、使用上の問題が発生してしまうためです。
アンプを適度に使用し、使用環境や管理方法にも問題がなければ、不調や故障が発生してもアンプの寿命とは限りません。部品の劣化によって動作や音質に問題が発生した場合でも、修理して直すことができるアンプには価値があり、買取業者に高値で売れる可能性もあります。
アンプのなかでも劣化しやすい部品
アンプにはさまざまな部品が使われており、それぞれで劣化の進み具合が異なります。なかでも劣化しやすい部品は「コンデンサ」「真空管・トランジスタ」「スイッチ」「プリント基板」の4つです。
ここでは、それぞれの部品が劣化した場合に見られる症状を紹介します。
コンデンサ
コンデンサとは、電気を蓄えたり放出したりする部品です。アンプのコンデンサには、内部に電極と電解液を含んだ湿式電解コンデンサが使用されています。コンデンサの劣化は、電解液がドライアップと呼ばれる蒸散を起こすことが原因です。
ドライアップを起こしたコンデンサは内部の圧力が高まり、コンデンサの天面に膨張・亀裂が生じます。場合によっては液漏れを起こし、基板や周辺部品の故障を引き起こすこともあるため注意してください。
コンデンサが完全に劣化すると電流を蓄えられなくなり、アンプを正常に通電させることができなくなります。
真空管・トランジスタ
真空管・トランジスタは、入力信号を増幅して出力する部品です。真空管はガラスチューブ。トランジスタは電子部品という違いはあるものの、役割自体に大きな差はありません。
真空管の劣化は、ガラス管内に空気が入ったりヒーター回線が切れたりと、見た目で破損が分かることもあります。一方、トランジスタの劣化が見た目で分かることはほとんどありません。
また、真空管であっても部品の劣化症状が見た目で分からないケースもあります。
アンプを使用していて音の出力性能に問題が発生した場合は、真空管・トランジスタの劣化を疑ってみましょう。
スイッチ
アンプには電源スイッチや音量調整のボリュームスイッチ、高音・低音など各音域を調整するなど多彩なスイッチが存在します。なかでも劣化しやすいスイッチは、使用頻度が高いボリュームスイッチです。
ボリュームスイッチが劣化すると、つまみを回すたびにスピーカーから「ガリガリ」とノイズが響きます。劣化の原因は、使い続けることによる摩耗や経年で酸化することによる接触不良などがあり、劣化を避けにくい部品です。
プリント基板
プリント基板は電子機器として動作するための回路基板であり、劣化により故障すると正常な動作ができなくなります。プリント基板は湿気に弱く、水回りや窓近くにアンプを置いておくと劣化が早まるため注意してください。
プリント基板のなかでも、ミューティングリレーは寿命が短い回路です。ミューティングリレーとは、スピーカー出力を過剰にしないための保護回路であり、スピーカーからポップノイズが出ないように対策してくれます。
アンプの電源を入れたときにスピーカーから「ブツッ」といった音が出た場合は、ミューティングリレーが劣化している可能性を疑いましょう。
アンプの寿命を延ばすためにできること
アンプには明確な寿命の年数がなく、使い方次第で寿命を縮めることも延ばすこともできます。所有しているアンプで音楽を長く楽しみたい方は、アンプのメンテナンスや保管について正しい知識を把握しましょう。
ここでは、アンプの寿命を延ばす方法を2つ紹介します。
定期的にアンプ内のメンテナンスをする
アンプは放熱のために空気を通せる構造となっており、使い続けると内部にホコリがたまります。ホコリなどのゴミは故障の原因となるため、定期的に電源を入れるかアンプの内部構造などに詳しい方の場合はアンプ内のメンテナンスも行いましょう。
メンテナンスを行う場合はアンプの外装カバーを外すと基板やヒートシンクが見えます。コンデンサなどの端子部には触れないよう、各部品の見た目に劣化症状が現れていないかチェックしてください。テスターを持っている方は、コンデンサの容量を測定してみましょう。
部品の奥深くまで入り込んだホコリは掃除機で吸い取れないためブロアーで吹き飛ばします。その際、PCのメンテナンスなどに使用する缶にガスが入った「エアダスター」を使いたくなる方もいると思いますが、アンプの場合は使用しないほうが良いと思います。また真空管についたホコリは目の細かい布で丁寧にから拭きしてください。
使用しないときはホコリ対策をする
コンデンサを使用しないときにそのまま放置していると、アンプがホコリをかぶってしまいます。アンプの故障を防ぐためにも、使用しないときはホコリが溜まらないようお掃除をこまめにしましょう。
ただし、ホコリが溜まらないようにするためといって押し入れやクローゼットの奥にしまったり、箱に入れて保管などはしないほうが良いようです。空気の流れのない押し入れやクローゼットの奥や箱などの中は湿気が籠るため故障のリスクが高まります。通気性のいい場所でホコリが溜まらないよう小まめに掃除を心がけてください。
アンプの真空管を交換する方法・注意点
アンプの真空管が劣化した場合は、自分で交換することができます。真空管を交換する方法は下記のとおりです。
①アンプの電源をオフにして、電源プラグをコンセントから抜く
②アンプの外装カバーを外し、真空管の実装位置を確認する ③ソケットと新しい真空管の規格が合っていることを確認する ④古い真空管を抜き、新しい真空管を挿す ⑤外装カバーを戻す |
以上の流れでアンプの真空管は交換できます。ただし、以下で紹介する注意点を踏まえたうえで作業を行いましょう。
〇感電に注意して作業する
アンプ内のコンデンサや真空管電極部分には高電圧が印加されており、不注意に触れると感電の恐れがあります。基本的なことですが作業時はコンセントから電源プラグを必ず抜くこと。絶縁ゴム手袋を着用し、両手ではなく片手で作業しましょう。また真空管はとても熱くなりますので、真空管が十分に冷めてから作業を行うことも重要です。
〇真空管の種類に注意する
アンプの真空管には、小型なプリ管と大型のパワー管があります。プリ管は真空管上部を持って抜き挿しがしやすく、交換する際に不便はありません。一方のパワー管は、根元のハカマ部分を持って引き抜かななければ分離する恐れがあります。
真空管の交換後は、アンプの音出しテストを行いましょう。スピーカーから音量・音質ともに問題のないサウンドが出た場合、真空管交換は成功です。真空管の交換方法を覚えることで、アンプの寿命を延ばして音楽を長く楽しむことができます。
まとめ
今回は、アンプの寿命に関して、劣化しやすい部品やメンテナンス方法などを解説しました。
アンプの寿命とは、劣化した部品を修理・交換しても正常に動作できなくなった場合のことです。アンプにはコンデンサや真空管・トランジスタ、スイッチ、プリント基板と劣化しやすい部品があり、劣化すると見た目や動作に症状が現れます。
アンプの寿命を延ばしたい場合は、定期的に電源を入れたり使用しないときはホコリが溜まらないような対策が必要です。アンプは大切に使用すると良好な状態を保つことができますが、ご不要になった際は買取業者に高値で売ることもできます。